京都の夏で、いちばん涼しい場所はどこか。
そう聞かれたら、迷わず貴船と答えたい。
貴船神社よりも、さらに奥へ。
木々に覆われた林道を抜けた先に、「奥貴船 兵衛」はある。
料理旅館であり、夏は川床のお店。
5月から9月末までのあいだだけ、川の真上に席がしつらえられる。
席に着いた瞬間、空気が変わる。
沢を渡ってきた風が、そのまま天然のクーラーになっている。
川のすぐ上、床の席で

まず運ばれてきたのは、氷を器にした涼やかな一品。
目の前は、水の音と緑だけ。
それだけで、もう特別な時間がはじまったのがわかる。
清流を眺めながら、冷酒を

お酒は冷やした純米吟醸を。
ラベルには「夏方(ナツザマ)」の文字。
すぐ足元では、水が白く跳ねながら流れていく。
その景色を眺めながらの一杯は、どうしたっておいしい。
椀もので、ひと息

銀の椀の蓋を開けると、ふわりと湯気が立ちのぼる。
澄んだお出汁に、白い身と焼き茄子。
木の芽の香りが、すっと鼻に抜けていく。
暑い日でも、あたたかい椀ものがうれしい。
これが京都の夏の食べ方なんだと思う。
目の前で仕上がる、氷の造り

造りは、氷の器に。
目の前で、ひと切れずつ丁寧に盛り付けられていく。

氷の上に、色とりどりのネタと青もみじ。
見ているだけで、体感温度が下がっていくよう。
冷たさで身が締まって、口に入れるとすっと甘い。
鮎の笹焼き

この日いちばんの楽しみが、鮎の笹焼き。
笹に包まれたまま焼かれた鮎は、青い香りをまとっている。
皮はぱりっと、身はふっくら。
わたのほろ苦さまで含めて、夏の川の味だった。
焼き物と、夏の野菜

続いて、しっとりと焼き上げた牛肉。
添えられた青唐辛子とみょうがの甘酢が、いい箸休めになる。
コースの流れの中で、ここだけ少し力強い。
その緩急が心地よい。
うなぎ、そして〆のご飯

香ばしく焼かれたうなぎ。
たれは重すぎず、山椒の葉の香りがふわりと立つ。

〆は、そのうなぎをのせたご飯。
香の物と一緒に、静かにいただく。
気づけば、外はすっかり夕方の光。
水の音だけが、ずっと変わらずに続いている。
帰り道に

帰りぎわ、門の前の看板を見上げる。
紫陽花が咲きこぼれていて、これもまた絵になる。
料理も景色も、この場所でしか成立しないもの。
予約を取るのは簡単ではないけれど、その価値は十分にあった。
また、夏が来たら。
ごちそうさまでした。
店舗情報
店名:奥貴船 兵衛(HYOUE)
エリア:京都・貴船(鞍馬・貴船)
住所:京都府京都市左京区鞍馬貴船町101
アクセス:叡山電鉄 貴船口駅より徒歩40分・車10分(要予約の送迎あり)
ジャンル:料理旅館、日本料理、鍋
営業時間:11:00〜19:00(ランチ 11:00〜/13:30〜の二部制、ディナー 18:00〜)
定休日:3〜6月は水曜/7〜9月は不定休
予約:完全予約制(075-741-3066)
予算:¥20,000〜¥25,000
川床期間:5月〜9月末
※サービス料10%/カード・電子マネー・QRコード決済可