チェンマイ旧市街、プラポックラオ通り。
古い建物をそのまま使った一軒に、白い看板が立っている。
Baan Landai Fine Thai Cuisine。
先ほどまでいた、同じ名前の食堂とは別の店だ。
掲げているのは「母の味」。
ランプーンに伝わる家の秘伝を、そのまま皿にしているのだという。
籐の背もたれの椅子に腰かけて、木のテーブルを見る。
料理が運ばれてくるまで、店のなかは静かだった。
テーブルに、色がそろう

高台の白い器に、濃い茶色の煮込み。
その向こうに、細い麺と海老の皿。手前の取り皿は、藍色の絵付け。
赤いドリンクのグラスまで含めて、色の置きどころが決まっている。
家庭の味だと聞いていたけれど、出てきたのは整えられた景色だった。
どれから手をつけるか、少し迷う。
こういう時間も、悪くない。
深い赤のザクロジュース

背の高いグラスに、深い赤紫の液体。
底のほうで氷がゆっくり動いている。
浮かんでいるのは、粒の実と、黄色い小さな花と、緑の枝。
飾りというより、香りを添えるために載っているように見える。
ひと口。
酸味が先に来て、甘さは控えめ。食事の合間にちょうどいい。
とろりとした、豚肉の煮込み

波形の白い器に、濃く煮詰まった汁と、大きな肉のかたまり。
横には、黄身がとろりとした煮玉子が半分。
八角のような甘い香りが立って、口に入れると肉は箸を入れる前から崩れている。
汁は思ったより軽い。
脂の重さを、酸味と香りが引き取っている。
円錐に積まれた、細い麺

丸い皿の真ん中に、細い炒め麺が円錐に積み上げられている。
てっぺんには青ねぎと、ほぐした海老。
古いレシピの炒め麺だという。
甘みと塩気が控えめで、麺そのものの香ばしさが前に出る。
まわりには、紫キャベツ、もやし、パクチー、黄色い漬物、ライム。
好きなものを崩しながら混ぜて、味を自分で決めていく。
唐辛子と一緒に炒められた海老を、最後に取っておく。
これが、いちばん強い一口だった。
ミシュランのプレートが、七枚

顔を上げると、白い壁にミシュランのプレートが並んでいた。
2020年から2026年まで、ひとつも欠けていない。

入り口のガラスにも、同じミシュランのステッカーが貼られている。
年号が変わるだけで、赤い丸は毎年おなじ場所に増えていく。
はじめの二年はビブグルマン、そのあとはセレクテッドとして選ばれ続けているのだという。
七年ぶんが横に並ぶと、味の話というより、続けることの話に見えてくる。
白い看板の前で

外に出る。
白い看板に、店名とタイ文字。その下に Fine Thai Cuisine。
入り口の脇には、開かれたメニューが立てかけてある。
写真つきで、はじめて来る人でも選べるようになっている。
構えは静かで、押しつけがましさがない。
看板の文字がところどころ剥げているのも、ちょうどいい。
母の味の、いちばん丁寧なかたち
高級店の顔をしているけれど、根っこにあるのは家の料理だ。
煮込みも、炒め麺も、どこかで食べたことがあるような味をしている。
それを、器と盛りつけと火加減で、ここまで整える。
七枚のミシュランは、たぶんそのぶんの時間なのだと思う。
ごちそうさまでした。
店舗情報
店名:Baan Landai Fine Thai Cuisine(バーンランダイ ファインタイキュイジーヌ/旧市街店)
エリア:タイ・チェンマイ/旧市街
住所:252/13 Phra Pokklao Road, Chiang Mai 50200
ジャンル:タイ料理
営業時間:11:00〜16:00(L.O. 14:30)/17:00〜22:00(L.O. 20:30)
定休日:月曜
予約:可(電話 065-848-4464/公式サイトにオンライン予約あり)
公式サイト:baan-landai.com
※ミシュランガイド 2020〜2026 に7年連続で掲載(2020〜2021 はビブグルマン)
※チャーンプアック周辺にある同名の食堂「Baan Landai」とは別の店
※営業時間は変わることがあります。訪問前に確認を。